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一色桃子の新章開幕でしょうか。
映像は上からの俯瞰の多用と、ほぼ定点で長回しが多い絡みのカメラワーク、各人物の日常は正面からの主観。芝居も絡みもできないと成立しない画づくりに作品の自信を感じます。
俯瞰の画は照明効果やシチュエーションも相まって硬派でありながら退廃的でもあり、かなりエロティック。冒頭から俯瞰で異常なイメージを突き付け、掴みは万全。夫の尋問に従いフラッシュバックする不貞行為の数々、各人物が語る自然なモノローグもドラマ的であり、そしてまた俯瞰に戻る醍醐味のある編集。
意図的なのか、NTR相手の部下がマネキンのような立場。必要以上に面を写さず、最低限の台詞のみで音声のヴォリュームがあがることも女性の挑発に興奮する様子もない。ただの「道具」としての立場なのは、ヒロインにとっては感情の入る余地はなく快楽のみの対象である故か。焦点はあくまで夫婦で、尋問する夫役も厚く優しく存在感を示しています。
クライマックス、夫の尋問に対し絶叫の告白に驚愕。これまでの作品の絡みでは淫語アドリブを多用していた一色桃子。この作品においては内容に即して押さえていたのか、その一声は溜め込んでいたものを一気に爆発させるような破壊力。このシーンの台詞の選択は女優に委ねられたらしく、まさにカメラが回れば女優の世界。一色桃子の面目躍如の場面です。
しかしラスト、夫に抱かれた時の言葉こそ本当の告白であろうと感じることのできる二重構造。異常さを経ての愛の物語に転じます。
エピローグ、二人の仲の良さに安堵すると共に、そこから始まりそうな二人の情交をAVとして観たいと思わせる構成。上手いです。
一色桃子の凄さは、夫を裏切って感情移入できない役のはずなのに、責められ言い訳がましいことを言いつつも、視聴者にとって可愛らしく愛おしくなる女性になっていること。演技だけではなく経験や教養を含む自身の気質があればこその表現。役への傾倒、同化が成功していると思います。
スズのタンブラーが効果的に使われています。関係性に説得力を持たせるのに最後まで小道具を疎かにしないところも好感が持てました。
と書いてきて、肝心のエロに関してほとんど触れていませんが、ご安心あれ。並のAVではありません。
間違いなく一色桃子の代表作のひとつであり、ターニングポイントに成り得る作品だと感じました。
Cap Nao
2024-02-28